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アナログAI半導体のMythic、NVIDIA出身のDr. Taner Ozcelik氏がCEO就任 エネルギー効率でAI推論市場の拡大を狙う
アナログコンピューティングでAI推論向けプロセッサを開発するMythicは、新CEOとして半導体業界のベテランであるDr. Taner Ozcelik氏を迎えたと発表しました。Ozcelik氏は、NVIDIAで自動車事業部を創設し、VP & GMとして事業を数億ドル規模に成長させた人物で、今回Mythicを率いて超高効率なアナログcompute-in-memory技術を本格展開し、高コストな用途に限られてきたAI推論市場を、より広い領域へと拡大していく戦略です。次世代製品では、電力とコスト効率を桁違いに改善しつつ、新しいソフトウェアツールキットと刷新されたアーキテクチャにより、アナログコンピューティングをこれまで以上に扱いやすくすることを目指しています。この組み合わせにより、低価格なエッジのコンシューマーデバイスからデータセンターの高性能コンピューティングまで、AIの経済性と消費電力の常識を塗り替える狙いです。
Ozcelik氏は、自動運転やロボティクス向け技術の商用化をリードしてきた草分け的存在です。NVIDIA在籍時には、自動運転向けの初期システムや世界初のJetsonシステムを立ち上げ、それが後のDrivePXやDriveCX、さらには世界中のロボティクスシステムの基盤となりました。その後はON SemiconductorでIntelligent Sensing GroupのSVP & GMを務め、ロボティクス、マシンビジョン、先進運転支援システム、車載カメラなど複数のエッジ産業にまたがる事業群を構築し、グループ全体で約10億ドル規模の売上とグローバルリーダーシップを獲得しました。直近ではLuminar TechnologiesでEVP & GMを務め、性能・コスト・サイズ・消費電力を50倍レベルで改善する次世代製品を主導するとともに、大手OEMから複数十億ドル規模の新規ビジネスを獲得しています。
Ozcelik氏は、「Mythicの歩みは以前から注目してきましたが、いま技術が転換点に到達したと感じ、参加を決めました。エネルギー消費とコストは、AIの急拡大によってメモリと電力需要が爆発的に増えている今、最大の課題です。アナログコンピューティングこそが、桁違いにエネルギー効率が高く、手頃なAI推論を経済のあらゆるレベルに届ける唯一の手段であり、Mythicは新しいアナログコンピューティングプラットフォームでその先頭に立つポジションにあります」とコメントしています。さらに同氏は、「エネルギー効率という観点では、Mythicのアーキテクチャはニューラルネットワークの性能と意思決定において人間の脳に最も近く、1演算あたりフェムトジュールレベルという前例のない消費エネルギーを実現しており、新しいAIの世界のゲームチェンジャーになります」と語っています。
Mythic共同創業者で現CEOのDave Fick氏はCTOに就任し、技術面を率いる体制に移行します。Fick氏は、「Taner氏は半導体業界で最も尊敬されるオペレーターの一人です。長年そのリーダーシップを敬意を持って見てきましたが、これからは共に働き、AI革命が求める膨大なメモリと性能ニーズを満たしていけることを非常に楽しみにしています」と述べています。現在、AI業界では計算需要が供給を大きく上回る「転換点」にあり、数十億から数兆パラメータに及ぶモデルをデジタルチップ上で処理する際、膨大なメモリアクセスとデータ転送がレイテンシとコストのボトルネックになっています。これに対し、Mythicのアナログアーキテクチャはcompute-in-memoryによりメモリ上で直接計算を行い、バス転送を不要にすることで、メモリ、電力、価格の制約をまとめて回避しようとしています。
Mythicの投資家であり、DCVC共同創業者兼Managing PartnerのMatt Ocko氏は、「過去10年で業界は非常に強力なAIモデルを開発してきましたが、現在のデジタルコンピューティング技術では、それらを利益を出しながら動かすことすら難しい状況です。次の10年は、こうしたモデルを実社会とビジネスの現場に実装する“AI推論市場”が主戦場になります。Taner氏は、この変革的なスピードと性能を、より低価格かつ低消費電力で新しいエッジデバイス群にもたらすための理想的なリーダーです」と評価しています。今後Ozcelik氏は、既に投資家・パートナーでもあるLockheed Martin Venturesなど、ミッションクリティカルなシステムを構築する企業との連携をさらに深め、ロボティクス、スマートシティ、セキュリティ、防衛といった分野で、従来のデジタルコンピューティングでは制約の大きかったユースケースを実現していく方針です。
Ozcelik氏は、「AI半導体の真の進歩を測る指標は、1ミリワットあたりの性能、つまりエネルギー制約の中でどれだけ計算性能を生み出せるかです。今後10年でAIがどこまで進化できるかは、この“performance per milliwatt”で決まります。そしてまさにここが、Dave Fick氏とチームのエンジニアリングによってMythicが他のAIチップメーカーと差別化しているポイントです」と述べ、「大幅に高い性能を、はるかに低いコストと消費電力で実現することで、エッジAIの洪水を起こしていきたい」と意気込みを示しています。Ozcelik氏はNorthwestern UniversityでPh.D.を取得し、The Wharton School of the University of PennsylvaniaでMBAを取得しており、今回のCEO就任は即日付で発効しています。
Mythicについて
Mythicは、AI推論用途に特化したアナログコンピューティングチップを開発するハイパフォーマンス半導体企業です。Austin(テキサス)とSilicon Valleyを拠点とし、アナログcompute-in-memory技術を用いて、市場で最高レベルの性能と、低コスト・低消費電力を両立するAI推論ソリューションを提供していることが特徴です。投資家には、DCVC、Atreides、Lockheed Martin Ventures、Lux Capitalなどが名を連ねており、エッジからデータセンターまで、エネルギー効率と経済性に優れた次世代AIインフラの構築を目指して事業を展開しています。
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