EdtechのMultiverseとデータプラットフォームのPalantir、NHS向けAI・データ研修プログラムで提携

Edtech企業のMultiverseとソフトウェア大手Palantirは、英国の国民保健サービス（NHS）スタッフに対してAIとデータ活用スキルを提供することを目的としたパートナーシップを発表しました。両社は、NHSのFederated Data Platform（FDP）の活用を軸に、現場スタッフのデジタルリテラシー向上と業務改善を支援していきます。

Palantirが提供するNHS Federated Data Platformは、NHS内のさまざまな分断されたシステムからデータを集約し、スタッフが重要情報に一元的にアクセスできるようにする基盤です。同社は、このプラットフォームの活用により、77の参加NHSトラストにおいて、手術件数の増加や退院プロセスの迅速化などに貢献できるとしています。一方のMultiverseは、デジタルスキル領域のアプレンティスシップやリスキリング・アップスキリングプログラムで実績を持ち、今回の提携では主にトレーニング設計と提供を担います。

Multiverseの創業者兼CEOであり、元首相Tony Blairの息子でもあるEuan Blairは、「NHS Federated Data Platformの力を真に引き出すためには、データとAIを自信を持って使いこなせる人材が不可欠です」と述べ、「このパートナーシップは単に新しいテクノロジーを導入することが目的ではなく、毎日それを利用して患者ケアに具体的な違いを生み出す人々への投資です。NHSのデジタル進化における重要な一歩に関われることを誇りに思います」とコメントしています。

両社は連携の一環として、FDPの活用にフォーカスしたアプレンティスシッププログラム群を共同開発します。最初の受講コホートは来年2月に開始される予定で、対象となる職種には、アナリスト、事務・管理職、マネージャー、臨床スタッフなどが含まれます。PalantirのUKおよび欧州担当Executive Vice PresidentであるLouis Mosleyは、「NHS FDPはすでに患者ケアの改善と、医師や看護師にとっての事務作業削減に寄与しています。次のステップは、このテクノロジーに習熟したNHSスタッフの数をさらに増やすためのトレーニングを強化することです。今回のパートナーシップはその中心的な役割を果たすでしょう」と述べています。

一方で、Palantirは米国での政府監視への関与や、Immigration and Customs Enforcement（ICE）との関係、ガザでの戦闘におけるイスラエル軍との関与などをめぐり、各国で少なからぬ議論と批判の対象となってきました。そうした政治的・倫理的な論争があるなかでのNHSとの連携拡大であり、今後も透明性とガバナンスの在り方が注目される可能性があります。今回の取り組みは、医療現場のデジタル変革において「テクノロジー導入」と「人材育成」を同時に進めるモデルケースの一つと言えます。データプラットフォームの構築だけでなく、それを活用できるスキルを現場スタッフに浸透させることで、患者ケアの質向上や業務効率化を目指すNHSの一手として位置付けられています。

Multiverseについて
Multiverseは、学位に代わる実践的なキャリア教育を掲げるEdtechスタートアップで、企業向けのアプレンティスシッププログラムや既存社員のリスキリング・アップスキリングプログラムを提供しています。データ、AI、デジタルビジネスなど成長領域のスキル習得を支援し、若年層からミッドキャリア層まで幅広い人材に実務と教育を組み合わせた学びの機会を提供している企業です。今回のNHSとの取り組みでも、現場スタッフがAIとデータプラットフォームを使いこなせるようにするための実践的なトレーニング設計を担います。