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次世代免疫療法のOuro Medicines、自己免疫性血球減少症を対象としたOM336の臨床試試験開始へ
次世代の免疫療法を開発するバイオテクノロジー企業、Ouro Medicinesは、自己免疫性血球減少症(autoimmune cytopenias)を対象にした新規治療薬候補OM336の国際的な臨床試験を今年後半から開始することを発表しました。対象疾患には、再発または難治性の自己免疫性溶血性貧血(AIHA)や免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)が含まれます。この発表は、医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』に掲載された研究者主導の臨床報告に基づくもので、同誌にはOM336を使用した重症AIHA患者2例の治療に成功した症例が報告されています。研究を主導したJun Shi医師(MD, PhD)によると、今回の症例報告は、AIHAに対するBCMAを標的とするT細胞エンゲージャーの初の査読付きデータであるとのことです。
Ouro MedicinesのCEOでMonograph CapitalのポートフォリオプリンシパルでもあるJaideep Dudani博士は、「自己免疫性血球減少症の患者は、深刻かつ生命を脅かす状態になる可能性があります。当社はOM336を通じて、こうした難治性疾患において画期的な治療法を提供したいと考えています。これまでの研究結果から、OM336はCAR-T療法のような強力な効果を、より簡便なモノクローナル抗体の投与方法で提供できる可能性が示されています」と述べています。NEJMに掲載された症例報告によると、OM336は一般的に忍容性が良好であり、短期間の皮下注射により迅速かつ深いB細胞の除去が達成されました。患者はグルココルチコイド、脾摘、抗CD20抗体療法、BTK阻害薬、CAR-T細胞療法など従来の多くの治療に抵抗性でしたが、OM336の治療開始後1ヶ月以内に血液検査数値が正常化し、6ヶ月間の追跡調査においても免疫抑制療法を中止したまま寛解を維持しています。重篤な副作用であるサイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性症候群(ICANS)、感染症などの有害事象も報告されていません。自己免疫性血球減少症の代表的な疾患であるAIHAやITPは、米国では希少疾患とされていますが、重症例では致命的な症状が生じ、患者の生活の質(QOL)を著しく損なう可能性があります。
Ouro MedicinesのチーフメディカルオフィサーであるNeely Mozaffarian医師(MD, PhD)は、「OM336は自己反応性B細胞を選択的に除去することで免疫系をリセットする可能性があります。この特性により自己免疫性疾患の治療における新たなアプローチを提供し、疾患修飾療法としての可能性が期待されています」と語っています。なお、Ouro Medicinesは6月14日に開催される欧州血液学会(EHA)年次総会において、OM336に関する安全性および有効性のデータを発表する予定です。パートナー企業であるKeymed Biosciencesが再発・難治性多発性骨髄腫を対象に行った臨床試験の結果を紹介するとともに、自己免疫性血球減少症における同薬剤の応用可能性について議論されます。
Ouro Medicinesについて
Ouro Medicinesは、慢性的な免疫介在性疾患に苦しむ患者のために、免疫系のリセットを目指した治療法を開発するバイオテクノロジー企業です。B細胞が関与する疾患を対象にT細胞エンゲージャー技術を活用し、持続的な寛解をもたらす新規治療法を提供しています。2025年にMonograph CapitalとGSKのパートナーシップによりサンフランシスコで設立され、TPG、NEA、Norwestなどの有力投資家の支援を受けています。