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2025/03/05

Startup Portfolio

チャットボットClaudeを開発する"Anthropic"がSeries Eで$3.5Bを調達し、評価額は$61.5Bに拡大

Anthropicは、Lightspeed Venture PartnersがリードしたSeries Eで$3.5Bを調達し、ポストマネー評価額が$61.5Bに達しました。これにより、Anthropicは世界で最も価値のある未上場企業の1つとしての地位を確立し、すでに天文学的な評価額にもかかわらず、投資家がリードするAI開発企業への投資意欲を失っていないことを示しました。

Lightspeed Venture Partnersが$1Bを出資し、Salesforce Ventures、Cisco Investments、Fidelity Management & Research Company、General Catalyst、D1 Capital Partners、Jane Street、Menlo Ventures、Bessemer Venture Partnersといった名だたる投資家が参加しました。

2021年にOpenAIの元研究者であるAmodei兄妹を含むメンバーによって設立されたAnthropicは、主要競合他社に対する研究重視かつ安全性を最優先とする選択肢としての立場を確立しました。同社のチャットボットClaudeは、2023年3月の公開以来、特に企業向けアプリケーションで大きな市場シェアを獲得しています。

Anthropicの急成長は、その驚異的な商業的成功を反映しています。同社の年間収益は2024年12月までに$1Bに達し、前年比で10倍の成長を遂げました。この成長はさらに加速しており、2025年の最初の2か月間で収益はさらに30%増加したとされています。

この資金調達は、AIスタートアップの評価が大きく変化している重要な局面で行われました。Anthropicの最新の評価額は、年間収益の約58倍に相当し、1年前の約150倍からは低下しましたが、それでも従来のソフトウェア企業の10~20倍という水準と比べると、驚異的なプレミアムが付いています。

AI企業の評価は単なるテクノロジーバブルではなく、市場における成長評価の根本的な変化を示しています。従来の評価モデルは、1年で収益を10倍に伸ばすような企業を想定していませんでした。Anthropicのような企業が、通常のソフトウェア企業なら10年かかる成長を1年で達成する場合、投資家は現在の財務状況ではなく、将来的な市場支配力を見越して投資しているのです。

この現象は興味深いパラドックスを生み出しています。AI企業が成長するにつれて収益倍率は縮小しているものの、それでも他の業界と比べると極めて高い水準にあります。これは、投資家が単なるAIブームに踊らされているのではなく、高度なAIがあらゆる産業において生産性の飛躍的向上をもたらすと確信していることを示唆しています。

Anthropicの評価額の急上昇は、従来のテクノロジー企業の常識とは異なり、企業が成熟するにつれて倍率が下がるという通念を覆しています。投資家の熱狂は、AIが単なるソフトウェアカテゴリーではなく、根本的な技術革新をもたらすという確信に基づいています。

今回の資金調達は、Anthropicが大手テクノロジー企業からの戦略的投資を獲得した後に実施されました。Amazonは同社に対して合計$8Bを投資し、AWSがAnthropicの「主要なクラウドおよびトレーニングパートナー」となりました。Googleも同社に$3B以上を出資しています。

OpenAIが消費者向けアプリケーションの開発にシフトしているのに対し、AnthropicはB2B技術プロバイダーとしての立場を確立し、他の企業が自社のモデルを活用できるようにしています。このアプローチは、CursorやReplitのようなスタートアップから、Zoom、Snowflake、Pfizerといったグローバル企業まで幅広いクライアントを惹きつけています。

Anthropicは発表の中で、「ReplitはClaudeを『Agent』に統合し、自然言語をコードに変換することで10倍の収益成長を実現しました」と述べています。他の注目すべき導入例としては、Thomson Reutersの税務プラットフォームCoCounsel(Claudeを活用し税務専門家を支援)や、Novo Nordisk(臨床試験報告書の作成時間を12週間から10分に短縮)などがあります。

さらに、AnthropicはClaudeがAmazonのAlexa+のAI機能を強化し、「数百万世帯およびPrime会員に高度なAI能力を提供している」と強調しました。

この資金調達の発表は、SoftBankがOpenAIに$40Bの巨額投資を計画しており、同社のプレマネー評価額が$260Bに達するとの報道が出た数週間後に行われました。このことは、AI競争の激化を浮き彫りにしています。

一方、中国のAI企業DeepSeekは、R1モデルを発表し、米国の競合システムと同等の性能を大幅に低コストで実現したと報じられています。この挑戦に対抗するため、既存プレイヤーは開発スケジュールを加速させています。

Anthropicはこれに対応し、Claude 3.7 SonnetとClaude Codeを発表しました。特にSonnet 3.7はプログラミング向けに最適化されており、同社は「コーディング能力における新たな基準を確立した」と述べ、今後さらなる進展を計画しているとしています。

主要なAI企業への巨額投資は、Generative AI市場が今後10年以内に$1Tの価値に達すると予測するアナリストの見解を裏付けています。

しかし、収益性の確立は依然として遠い目標です。Anthropicを含むAI企業は、研究、モデル開発、コンピュートインフラへの巨額投資により大きな赤字を抱えています。それでも投資家は、これらの企業が将来的に人間とテクノロジーの関係を根本的に変えるプラットフォームになると確信しています。

AI競争が激化する中で、これらの莫大な評価額が持続可能なビジネスモデルによって正当化されるのか、それともAIバブルに過ぎないのかが最大の疑問となっています。現時点では、Anthropicの資金調達成功が、投資家が前者に賭けていることを示しています。

 

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