BioTechのAltos LabsとYale大学の研究で、安定した遺伝子の発見が老化と長寿の理解に貢献

2025年1月27日、学術誌Aging（Aging-US）の第17巻第1号に、「年齢に依存しない遺伝子：マウスの複数組織における参照遺伝子の同定と特性解析」と題した研究論文が発表されました。この研究は、Yale University School of MedicineとAltos Labsの研究チームによって行われ、筆頭著者のJohn T. González氏、責任著者のAlbert T. Higgins-Chen氏が主導しました。研究チームは、老化に伴って変化しない遺伝子のセットを特定し、老化研究の精度向上や、特定の遺伝子がなぜ変化しないのかを解明する手がかりを提供しました。

従来、参照遺伝子（Reference Genes）は若い個体でのみ検証されており、生涯を通じた体系的な研究は行われていませんでした。この研究では、マウスの17種類の組織を対象に、生後1カ月から21カ月以上の期間にわたり遺伝子活動を解析。RNAシーケンシングと高度なバイオインフォマティクス手法を用いた結果、すべての組織で変化しない9つの遺伝子と、特定の組織で安定する遺伝子群を特定しました。さらに、これらの遺伝子は一般的に短く、CpGアイランドと呼ばれるDNA領域を持つことが判明。この特徴が細胞の健康維持や老化耐性に関与している可能性が示唆されました。異なるデータセットやRT-qPCR解析を用いた検証により、これらの遺伝子の安定性が確認されました。

研究の重要な発見
1. 細胞の基本機能と老化耐性
• 安定した遺伝子は、ミトコンドリアの活性やタンパク質の維持など、細胞にとって不可欠な機能と関連していました。
• これは、「老化に伴うすべての変化が遺伝子の異常調節によるもの」という従来の仮説に疑問を投げかけ、一部の細胞プロセスは自然に老化に耐性を持つ可能性を示唆しています。
2. 従来の参照遺伝子の信頼性低下
• これまで老化研究で標準的に用いられてきたGAPDHやACTBといった参照遺伝子が、年齢とともに変動することが判明。
• 研究者はこれらの遺伝子を基準として遺伝子活性を測定してきましたが、その発現量が変化すると、測定結果が不正確になる可能性があります。
• 本研究によって特定された新しい安定した参照遺伝子は、老化関連疾患、再生医療、長寿科学の研究における標準ツールとして活用されることが期待されています。
3. 老化の進行を抑制する治療法への応用可能性
• 生涯にわたって変化しない遺伝子が、老化を防ぐ役割を持つ可能性が示唆されました。
• これらの遺伝子を標的とした治療により、加齢に伴う身体機能の低下を抑える新たな治療法の開発が進む可能性があります。
• 今後の研究が、この発見を臨床応用へと発展させることが期待されます。

研究チームは、「老化に伴い変化する生物学的プロセスと、変化しないプロセスの両方を解明することが、老化の本質を理解する鍵となる」と述べています。この発見は、老化研究の新たな基準を確立し、老化に関する医学と科学に大きな影響を与える可能性があります。